安房の虫屋の採集記

素人ながらに昆虫採集を楽しんでいる学生です。気まぐれに投稿します。

酷暑の房総part2

8月25日

この日、私は夏休み最終日でしたが、夏休み初日に買っておいた18きっぷがまだ一回分残っていたことに気づき、急遽房総に行ってきました。

 

今回の狙いの種はズバリ、

「ルーミスシジミ」。

千葉県以西の照葉樹林に生息する、表面の水色と裏面の淡い灰色が美しいシジミチョウですが、その分布は極めて局所的であり、

国内では千葉県および紀伊半島島根県山口県徳島県福岡県大分県宮崎県鹿児島県 (屋久島以北)に生息という、極めて飛び地的な分布を示しています。(Wikipediaより引用)

また、環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類 (VU)

に指定されており、ここ千葉県でも絶滅危惧Ⅰ類に指定されている希少種になります。

千葉県では房総半島のみに生息し、国内で最も安定した生息地の一つでもあるため、今回本種の観察に出向いてみました。

 

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5時半ごろに最寄駅発の外房線に乗り込み、7時過ぎごろに産地最寄りの駅(鴨川市)に到着。

駅から1時間半ほど歩き、目的の林道を目指します。

途中、人家脇の道沿いで飛んでいた黒いアゲハを捕獲。

房総ではよく見るナガサキアゲハ♂でした。

今回の採集で本種は結構出会いました

途中木の上に猿の家族が……コチラは房総では初めて見ました。

 

このような山道をぐんぐん進んで行ると、様々な昆虫が飛び出してきます。

 

 

こちらも房総ではよく見るナミハンミョウ。ただ狙わないと他の種類のハンミョウにはあまり出会えない印象…

目線ほどの高さの木で鳴いていたミンミンゼミを捕まえてみると、セミヤドリガ付きでした!2年ぶりくらいに見かけました。

また、道中にアゲハ類のよく集まるクサギの花をいくつか発見しましたが、時間が早く蝶は集まってなかった様子。帰りにまた見てみましょう。

 

 

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目的地にだいぶ近づいてきた所で、ハンミョウの沢山いた砂利道を見つけ遊んでいると、

「あれ…?この飛び方とこの配色、そうじゃね…?」

恐る恐る、目線はどの高さを飛んでいたシジミチョウを採集してみると……

採れた…!!!

見事、狙いのルーミスシジミでした!

まさか目的地に付く前に採れてしまうとは。

目立ったスレもなく、鮮明な水色が美しい個体でした。

この場所では他にもムラサキシジミをちらほら見かけましたが、ルーミスはこの一頭のみ。

 

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そうこう歩いてたら、9時半ごろにようやく目的地の林道に到着!途中道が分からず、通行人のおじいさんに道を教えてもらいました笑(ありがとうございます)。

ここでは、先ほども一頭採集したハンミョウがうじゃうじゃと。

一歩進む度に一気に無数の個体が飛び出していきました。

 

 

そんなこんなで沢沿いを歩いていると、葉上に静止するルーミスを発見!こちらもスレはほぼ無く美しい個体。

 

この1匹を皮切りに、1匹、また1匹、今度は2匹とどんどん見つかりました笑

こちらは青い面積が広く美しい、恐らくメスの個体

裏面の大理石のような模様もなかなか美しい

少しスレのあるオスの個体

全体的にオスが多い感じでメスは2匹のみ採集できました。発生初期なのか…?

そんなこんなで最終的には30頭ほど観察でき大勝利!という結果で、10時半ごろにはこの林道を出ました(ハエやブヨが多すぎてうざったるかったのもあり笑)

 

続いて林道入り口付近の草原でホソバセセリを狙いましたが、無数のジャノメチョウのみ。

本種も千葉では局所的な種なので一応採集しておきました。

 

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今度は別の山道にて採集しつつ、帰路に着きます。

杉林脇の竹藪をチラチラ飛ぶ蝶を採集してみると、ゴイシジミでした。

普通種ですが、千葉では産地も個体数もあまり多くないので見かけたら採集しています。

 

先ほどのクサギの花に再び寄ってみると、花のかなり高いところにカラスアゲハがいましたが届かず…

目線ほどの株で吸蜜していたアゲハはクロアゲハやモンキアゲハばかり。何気に千葉でモンキアゲハは初見でしたが、8月も末でボロボロなのでこの辺はリリースしました。

やっと低い場所で吸蜜していたカラスアゲハが採れましたが、こちらもやはりボロボロ。

夏型のカラスは派手で美しいので集めてますが、流石にリリースしました(笑)

その後、しばらく粘っていると完品と呼べる♂を採集!

前羽の先が少しだけ擦れていましたが、それ以外はほぼド完品です。(まだ羽も少し柔らかかったので今朝羽化したてだったのかもしれません)

光を当てて撮影すると、このように青と緑色が見事に美しい。個人的には夏型はミヤカラよりカラスの方が好きです。笑

そんなこんなで夜には予定もあったので、14時ごろには帰路に着きました。

 

本日の成果は↓

ルーミスシジミ ×5

Panchala ganesa loomisi

ゴイシシジミ ×1♂

Taraka hamada hamada

カラスアゲハ ×2♂

Papilio dehaanii dehaanii

モンキアゲハ ×1♀

Papilio helenus

ナガサキアゲハ ×1♂

Papilio memnon

ジャノメチョウ ×1♀

Minois dryas bipunctata

キマダラコヤガ ×2

Acontia trabealis

オオモンツチバチ ×1♂

Scolia (Scolia) histrionica japonica

ナミハンミョウ ×1

Panchala ganesa loomisi

超絶酷暑の暴走半島

2024年7月29日。

この日は、私の学校の生き物屋3人と一緒に、千葉は房総半島の海岸にて、「カワラハンミョウを中心とした海浜性の生物を見に行こう」という話になり、本日行ってまいりました。

ちなみに今回のメンバーは、魚屋、甲虫&鳥屋、植物屋、そして鱗翅屋の私、という愉快な4人組で行ってまいりました。

午前9時半頃

ポイントに到着!!久々の海にテンションが上がります⤴︎

 

余談ですが、普段私は基本的に鱗翅目を採るので、メッシュのネットを使っていますが、今回は砂浜での採集なので、100均の少し目が荒い網を使用。以前にダ⭕️ソーで330円で買った物ですが以外とよく使えます(笑)

 

 

というわけで早速海岸の草むらを皆で散策していると、足元から無数のバッタが飛び出します。その中に時折見慣れない「青い」バッタが飛び出してきたので、採集してみると………

ヤマトマダラバッタ!!

自然度の高い海岸の砂浜にのみ生息するバッタで、ここ千葉県のレッドリストでは

重要保護生物 (B)=環境省の絶滅危惧Ⅱ類相当

に指定されており、全国的に見ても減少傾向にある希少なバッタです。

しかし、「いる所には非常に多い」タイプの昆虫のようで、今回は海岸を歩けば歩くたびに無数の本種が飛び出しました。

 

ちなみに先ほど、「青いバッタ」と言いましたが、どの辺が青いのか?と思われるでしょう。

それは隠れた下翅を覗くと一目瞭然です!

このように、下翅が海のような美しい青色をしているのです!

そのため、足元から飛び出すとこの青色が目立って見えました。

 

続いて、魚屋の同行者が何か獲りました。

コノシロというらしく、食べるとまぁまぁ美味い魚らしいですが、我々はリリース()

 

そうこう散策してる間に、同行の甲虫屋1人が

「採れた!」と1匹目を捕まえました。

まずい、私も見つけねば…

 

と、思いつつ歩いていると、目の前からハエ?のようなものが飛び立ちました。しかし何か違和感を感じ、追いかけてみたらまた飛び立ちます。そしてまた止まった所に息を殺して網を被せてみると…………

やりました!

カワラハンミョウです!!!!!

名前の通り、河原や砂浜に生息するハンミョウの一種で、北海道から九州まで広く生息していますが、実際に見られる産地は非常に限られています。

本種は千葉県のレッドリストでは、

最重要保護生物 (A)=環境省絶滅危惧Ⅰ類相当

そして環境省レッドリストでも、

絶滅危惧ⅠB類 (EN)

に指定されている、非常に希少で生息地の限られたハンミョウになります。

 

この個体を採った直後に、もう1匹も無事採集…

しかし、最初に採った個体(下)と比べると、少し模様が違いますよね?

それもそのはず本種は、

「地域や個体により、個体変異が顕著に現れる」

ハンミョウなのです!

この2匹の他にも、ネット上で「カワラハンミョウ」と検索してみると他にも様々な模様パターンの個体が見られます。

 

この後4匹ほど本種を採集できましたが、希少種ということもあるので最初の2匹以外は全てリリース。 

 

 

事前に同行の甲虫屋に「倒木やゴミを起こすと、面白いゴミムシとか採れるかもね」と教わっていたため、メインターゲットを落とせた後はそれを探してみました。

倒木自体は結構あるので、手当たり次第に起こしていると……

いました!

ヒョウタンゴミムシです!

 

砂浜などに多く生息するゴミムシの一種で、クワガタのように発達した大きな顎がカッコいいです。

海岸などでは普通に見られる種とのことですが、縁がなく初採集だったので嬉しかったです!

 

同行者も私もカワラハンミョウを含め色々観察できたので、次のポイントの海岸に移動します。

午前12時頃

続いての海岸。草原に低木が入り混じるような、先ほどとは少し違う環境です。

ここは鳥屋の同行者が「鳥が色々いそうだなぁ〜」ということで来た場所なのですが、花がそこそこ咲いていて良さげなので、我々虫屋海浜性のハチ類などを狙っていきます!

 

 

早速、ここに隣接する駐車場を歩いていると、足元から一頭のバッタが飛び出し、網を被せます。

クルマバッタでした。

山あいの草原などによくいるバッタという印象でしたが、海岸の草むらにもいるんですね…

よく似ているトノサマバッタとは、このように後翅に太い帯が入ることで見分けられます。

今度は海岸を歩いていると、足元からどこか既視感のあるバッタが跳ね……

先程にも出会った、ヤマトマダラバッタでした。

環境的にはいそうだな〜とは思いましたが、ここのポイントにもいるとは…

この辺り一帯は広く生息しているのかもしれませんね。

 

すると、目の前をあまり見慣れないハチ?アブ?が飛んでいるのに気づき、採集します。

んん〜〜????

これを見た私は、たまたま先日Twitter(X)のffさんが採集していた、「キアシハナダカバチモドキ」かなぁ?と思いました。

しかし、その後Twitterにあげたところ

「ニッポンハナダカバチだと思います」

と言われ、調べてみるとビンゴ!

しかし、やたらと「絶滅危惧種」や「レッドデータ」という単語が予測変換に出てくるので、さらに調べ進めてみると…

 

砂浜環境の改変、護岸工事やオフロード車の侵入、クロマツの植林などにより、全国的に数を減らしている種。

 

とされており、千葉県では記載が無いものの環境省レッドリストでは、

絶滅危惧Ⅱ類 (VU)

に指定されていることが分かりました。

 

ヤマトマダラバッタやカワラハンミョウのみならず、こんな希少種までここで育まれているとは…房総半島の強さを改めて実感しました。

この海岸では他にも、ムラサキツバメなどを採集できました(飛んでる所を見て、ルーミスシジミかと騙されて採ったのは秘密です……)

 

そんな感じで採集は午後2時頃に終了し、帰路に着きました。

非常に充実した採集で楽しかったです!この場を借りて同行してくれた3人にはお礼申し上げます。

 

 

本日の成果は↓

 

カワラハンミョウ ×2

Cicindela laetescripta

ヒョウタンゴミムシ ×2

Scarites aterrimus

ヤマトマダラバッタ ×3

Epacromius japonicus

ニッポンハナダカバチ(本土亜種) ×1

Bembix niponica niponica

クルマバッタ ×1

ムラサキツバメ ×1

アオスジアゲハ ×1

ツマキシャチホコ ×1

春の息吹と厳冬の蛾。

 

2024年2月17日

早春のこの時期に現れるとある蛾を狙いに、知り合いと共に埼玉県某所の河川敷に来てみました。

 

 

 

その蛾がいるのはこんな河川敷の

 

 

 

こんな環境。

 

予報に似合わず、少々雲はあるが晴れて風が弱くなってくれたので条件は完璧…。

 

 

とりあえず、私はまだその蛾を見たことも採ったこともないので、飛んでる飛翔体を手当たり次第に目を付けていくと…

 

 

「ん?あれか?」

 

明らかにモンキチョウより一回り小さいくらいの鱗翅目が数匹舞っていました。

割と低いところを飛んでたので楽にネットインすると…

「うわぁぁぁあ!!!採れた!!!フチグrロロ」

着いて5分もせずに網に入ってしまうとは。

他にも目を凝らしてみると、数匹似たようなものが飛んでいたのでこちらも網を振ってみると…

2個体目。

この場所が多産地な故なんでしょうが、聞いてた話だとこんなに軽々採れる虫とは思っていなかった……

毒瓶で〆てから表を拝見。

いつも図鑑で見て憧れてたあの蛾だ…!と2度目の感動。

 

そう、こちらが今回の狙いの蛾である、

"フチグロトゲエダシャク"

Nyssiodes lefuarius

になります。

時間は11時手前、既に見渡す一面にフッチーが乱舞していました。

 

 

 

別個体で一応生態写真写真もパシャリ

 

3、4、5匹目

ちょっと楽に採れるからといって採りすぎた感あるので、残りの♂は全キャッチ&リリース。

 

ここで同行してた知り合いがあるものを発見…

 

交尾ペア。

採集を優先してしまったそうなので証拠程度の写真ですが、数匹の♂が地表付近を舞ってたところをよく見たらペアがいたそうです。

こちらのペアは見つけた知り合いが有り難く採集…

 

 

 

因みに、飛んでた飛翔体の中にはキタテハやモンキチョウなんかも混じってました。うーむ、春を感じる…

 

最後に、フッチーの雌が採れたらやってみたいことがあったので、折角なのでそれもやってみました。

手に乗せてたら案の定コーリングを始めたので、草むらに(勿論逃げられたくないので手ごと)置いてみると…

 

フェロモンに誘われ大量の♂がメスに向かって飛来してくるのです!

そう、フッチー採集の一種として♀を使った「フェロモントラップ」があるのですが、簡易的にそれをやってみました。

 

先ほどいた場所に♀を戻し撮影、そして♂を待ってると…

すぐに数頭の♂が飛来し交尾になりました。

交尾態になった後も♂がフェロモンに寄せられて飛来してきたので、こんな風に♀を奪い合ってるような光景も撮れました!

 

 

 

こんな感じで初のフッチー採集でしたが非常に充実しており本当に楽しい採集でした!

また来年も是非この蛾は見に行きたい…!

 

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フッチー採集の後、近くの雑木林で知り合いと糖蜜採集もやってきました。

2人で撒いたので結構広範囲に撒けました!

 

撒いてからすぐに飛来したのはカシワオビキリガ。

この日は本種含むconisuta属が無限にやってきました…

 

大量にいるカシワオビを見てたら何か「ん?」となる個体が…

 

「ウスミミモン!」

本当に見た時声が出ました、今回密かに狙ってた冬夜蛾なので嬉しすぎる…!

みんな大好きミッキーことミツボシキリガもその後数匹やってきました!

 

その後同行者も無事にミッキー&ウスミミモンを採集。今回、この2種はマジで無限にやってきてましたw

 

木の幹に撒いた糖蜜にはキバラモクメキリガが!本種も今回は10頭ほどやってきました。

 

いくつか飛来したキバラを見てたらまたもや違和感のある個体が…

「アヤモクメ来た!!」

これも大声が出た…

すぐに同行者もやってきて急いで採集しました。今回のフィールドだと普通種な本種ですが、自分は全く縁が無く見たことなかった冬夜蛾なので本っ当に嬉しい…

ミツボシ&ウスミミモンのツーショット。

今回の採集だとこの2種+カシワオビキリガが最優先種でした。

そして同行者も別個体のアヤモクメを発見し無事に採集!!

欲を言えばもう少しアヤモクメ来ないだろうか…と思いましたが、1人1頭ずつのノルマは達成できたので満足。

 

その後はミツボシ&ウスミミモン追加、クビグロクチバ.sp、キノカワガなど色々採ってから帰路に着きました!

 

この日の戦果↓

 

キバラモクメキリガ20↑

カシワオビキリガ大量

フサヒゲオビキリガ7

ミツボシキリガ20↑

アヤモクメキリガ2(一頭同行者採集)

スモモキリガ5

ウスミミモンキリガ18

ヨスジキリガ1

ヒメクビグロクチバ?4

conistra.sp20↑

チャマダラキリガ1

 

おまけ

 

フチグロトゲエダシャク♂

Nyssiodes lefuarius (Erschoff, 1872)

 

フチグロトゲエダシャク♀

Nyssiodes lefuarius (Erschoff, 1872)

 

フチグロトゲエダシャク交尾

Nyssiodes lefuarius (Erschoff, 1872)

 

ウスミミモンキリガ

Eupsilia contracta (Butler, 1878)

キバラモクメキリガ

Xylena formosa (Butler, 1878)

ミツボシキリガ

Eupsilia tripunctata  (Butler, 1878)

ウスミミモンキリガ

Eupsilia contracta (Butler, 1878)

ミツボシキリガ

Eupsilia tripunctata  (Butler, 1878)

ヒメクビグロクチバ?

Lygephila recta ?

アヤモクメキリガ

Xylena fumosa (Butler, 1878)